スプリングコンサート


 天候の都合上、しっかりとしたリハーサルを行うことなく始まったスプリングコンサート。
 しかし、梨の木から舞い散る花びらが非常に美しく、穏やかな気持ちで迎えることが出来ました。
 コンサートを迎えるに際しての緊張感はほとんどありませんでしたが、リハーサル不足による幾分の不安が私の中にありました。
 私は毎週行われる音楽練習が嫌で、スプリングコンサートに向けての毎日の音楽練習も嫌で嫌で堪らなく、参加したくない気持ちで一杯でした。
(音楽練習が嫌だ!)
 という思いだけではありませんが、なのはなファミリーに入所してから、私はずっと気持ちが落ち込んでいます。
「音を楽しむ」、音楽を楽しもうという気持ちが全く起こりません。
 それでも、
(小バンドのメンバーとしてドラムを担当させてもらっている以上、会場にいるすべての人に音楽を届けなくてはいけない)
 という思いが、毎日の小バンド練習を通して除々に湧き上がってきていました。
 しかしコンサート当日には、自身のドラムパートに何点かの不安箇所があった上に、タムやスネア、シンバルの位置を高くしたドラムを本番で叩くことによる不安が、冒頭に記したように私の中には強く在りました。
 また、コンサート開始直前に行われた、僅かな時間でのリハーサルの際に何点かの不備も発生し、調整または改善する時間がなくコンサート本番を迎えてしまいました。
 このように、私の中には音楽を伝えたい気持ちと上手く音を出せないかもしれないという不安な気持ち、またすべてが嫌だという落ちこんだ気持ちが混在していました。
 午前9時30分。
 合唱は「ハナミズキ」を皮切りに、全体での楽器演奏「Zoo 愛をください「や「何度でも」を演奏し、音を伝えたい気持ち、伝えられないかもしれない不安感以上に、コンサート当日も私の中にある辛い、苦しい、嫌だというマイナスな気持ちを隠すことは出来ませんでした。
 ただ、合唱では普段より、
(歌おう、伝えよう、表現しよう)
 という気持ちが強く、いつにも増して声を出せたように思います。
 また、全体での楽器演奏の際にも、
(伝えよう、表現しよう)
 という思いが前に出ていたと思います。
 そして、コンサート最終演目の小バンド演奏。

・ハプニング

 当日は風が強く、譜面台が倒れたり、倒れはしなくても譜面が飛んでいってしまったりで、コンサート開始時にあった不安感に拍車を掛けてその思いが強くなってしまいました。
 私は演奏前から譜面を用意していたにも関わらず、1曲目の「Arrow of pain」にさしかかる時点には既に譜面が飛ばされてしまっており、司会者が話し終えるまでに曲を開始できる体勢を整えておくべきであるのに、
(譜面が飛んでしまっている! 間に合わない! どうしよう!)
 という焦りで一杯になってしまい、実際に『Arrow of pain』の演奏が始まっても風と譜面のこと、またそれらにより次の曲に影響が出ないか、会場のお客様を待たせていけないという不安と焦りで頭も心も一杯になってしまい、1曲目、2曲目「Infection」と演奏に集中することが出来ませんでした。
 そういった不安と焦りから、小さなミスをしてしまったことが今でも心残りです。
 コンサート後半に入る前の休憩時間に、ちゃんとした風対策をしておくべきだったなと思います。
 「Boderline」は3曲目で、それからは、ある程度譜面を固定することが出来たので、演奏や音を伝えるということに気持ちが向くようになりました。
 しかし、幾分残っている不安感からかソワソワしてしまい、落ち着いて安定した音、またリズムを刻むことに集中出来ませんでした。
 4曲目の、「We can go」からは、曲紹介の間になんとか楽譜を上手く固定することができ、自身の不安感も解け、リズムの良い八ビートに乗って、曲を、そして音を楽しむことが出来ました。
 メインドラムのかよちゃんと幾分リズムがずれた箇所がありましたが、客席の皆様に、
(音を伝えよう、楽しさを伝えよう)
 という気持ちで叩くことが出来ました。
 5曲目のお母さんが歌う「宙船」では、軽快なリズムに乗って、観客の手拍子も聞こえてきて、音を楽しもうとする、伝えようとする小バンドメンバーの気持ちが伝わったような気がして嬉しかったです。

・「音」を楽しめた

 ラストの曲、お父さんが歌う「傘がない」では、なのはなファミリーに来て初めて余計な雑念を感じることなく、音を純粋に楽しむことが出来ました。
 「音楽」を自身の中でつくることができました。
 3台のあるドラムの音もピタリと重なり、ドラムの3人、小バンドのメンバーだけでなく、会場全体の空気、気持ちがひとつになったような気がして、演奏していても気持ちが良かったです。
 現在このように感想文を書いていて、なのはなファミリーに対する自身の強い思いや、落ち込んだ気持ちに変化があったわけではないのですが、スプリングコンサートを通して、なのはなファミリーに来て初めて音楽を楽しむことが出来、大勢の前で音をつくることの気持ち良さ、そしてそれがひとつになった時の喜びを感じることが出来て良かったです。