春風の日  

 スプリングコンサートまでの過程の中で、初めてやることが、いくつかありました。
 ひとつは、飾り係のリーダーを、なおみちゃんと2人でやらせてもらったこと。
 もうひとつは、うり太郎劇団に参加できたことです。
 わたしは、スプリングコンサートの係の発表で、飾り係のリーダーに、自分も入っていると聞いたとき、驚きと、嬉しさと、どうしてわたしなんだろう、という気持ちがありました。
 その日は気持ちがしゃんとして、マラソンの練習も頑張ることができました。
 わたしがなのはなファミリーへ来てすぐに、卒業生のしおりちゃんの、新春コンサートの作文を、ミーティングで聞かせてもらったことを、思い出しました。
 あの作文が、もう一度読みたいと思いました。
 でもなかなかタイミングが掴めずに、コンサートまでの間、読めずじまいになってしまいました。
 わたしは、コンサートの準備の期間中、自分の中にもともとあった、リーダーという役割についての固定観念が、なかなか抜けずにいるのを感じました。
 なおみちゃんは、ドキュメントビデオの製作もやっていたので、わたしは、
(1人でみんなを引っ張っていかなければならない)
 と、思っていました。
 そのせいか、なかなか動けない自分を残念に思ったり、飾りをよいものにしていこうと、作業をするみんなを、ひとりでに、高くて遠く感じることが、ありました。 
 以前、おとはちゃん(ハートピーの子供で、夏休みなど、学校がお休みのときなど、山小屋に遊びに来てくれます)のシスターをやらせてもらったとき、シスターだからするとか、シスターじゃないからやらない、とかいうのは、間違っていると、教えてもらいました。
 飾り係でも、うり太郎劇団でも、初めのほうの話し合いでは、具体的なイメージや案が浮かばずに、どんどん視野が狭まっていきました。考えようと思えば思うほど、頭が止まってしまいました。

・準備を通して

 それまでは、飾りや劇を考える人になったことは、ありませんでした。
 係に分担されたときはとても嬉しかったのに、なにも浮かんでこないので、
(頼りないとか、駄目だとか、思われているのかもしれない)
 と思ってしまいました。
 けれど、風車を作ることが決まったり、台本ができ上がったり、1度方向性が決まってしまうと、こうしたら、もっと面白いものができるかもしれないというアイデアが、出てきました。
 以前のミーティングで、1人が出した案は、それが選ばれても、選ばれなくても、みんなの共有財産になるというお話をしていただきました。
 そのことがいつも頭の中にあって、怖れずに、感じたことを発言することができました。
 今回、飾り係の反省会をしたとき、少ししか作業に参加できなくて、申し訳なく思った、という人が何人かいました。わたしは、
(みんながもっと、充実した気持ちを持ってくれるような、準備期間にしたかったな)
 と思います。
 わたしも、うり太郎劇団の練習から帰ったら、コンサートの飾り付けが済んでいたときには、少し寂しい気持ちもありました。
 そのとき優先しなければならないことがあったり、体調や気分がよくなくて、作業に参加できなかったとしても、
(確かにわたしは、自分の関われる部分には、責任を持って関わったんだ)
 という気持ちを、みんなが持てていたら、どんな作業でも楽しいのではないかなと、思います。それには、
(短い間の作業のなかでも、くっきりとした、具体的な成功を、小さくともできたらいいのかな)
 と思います。
 細かい目標を作って、作業が効率よく進んでいく、みんなで素晴らしいものを作っていく気持ちよさを、どんなときも大切にしたいです。

・共通認識を持つ

 
花紙を使って、たくさんの花を作りました。
 1500個以上は作ったと思います。
 それを作りながら、この飾りは、いったいどの部分に使われるのか、解らなかったという、感想を言ってくれた人もいました。
 共通認識が、足りなかったと思います。
 わたしも、準備期間中、ステージ作りに参加し、飾りについて尋ねられたとき、はっきりと答えることができませんでした。
 人に伝えて、みんなで想像を膨らませながら、作っていたら、作業にも参加しやすかったかもしれません。
 しかし、わたしにとって、みんなで飾りを作っていく時間は、とても楽しいものでした。
 なのはなファミリーでは、様々な場面でチームに分かれて作業します。
 いろいろな人と、一緒に作業することになります。
 どの人と一緒になったとしても、わたしはこの人について、もっと深く知ることができるかもしれない、というわくわくした気持ちになります。
 リーダーになったことで、いつもどれだけの人が支えてくれているのか、少しかもしれないけれど知りました。
(この人の為なら、どんなことでもしたいと思わせてしまうような人が、いるんだなあ)
 と、思います。
 偉そうかもしれませんが、誰かの、よくしていきたい、いいものを作りたい、という気持ちに心が打たれるような気がするときがありました。
 わたしは、今回飾り係のリーダーを経験したことで、一緒に作業を進める人の、全てをよりよくしたいという思いとも、共通認識やチームワークの大切さとも、今まで以上に向き合って、これからを過ごしていけると思います。

・みんなで作った風車

 
当日が近づいてくるにつれて、雨の予報が晴れへと変わっていきました。
 会場も、美作アリーナから、山小屋へと変わりました。
 スプリングコンサートの日は、風が吹き、気温もあまり暑すぎないで、とてもいい天気でした。
 物干し竿に山ほど並べた風車が、くるくると回っていました。
 その光景を見て、わたしは、飾り付ける瞬間に立ち会えなかったことや、準備期間にあった反省点も、全部、あってよかったことのように思えました。
 風車を見て喜んでくれる人を見るたび、とても幸せでした。風車が回ると、それと一緒に、梨の大きな木から、白い花びらが雪のように降ってきました。
 ベランダの、花ののれんもちらちらと揺れていました。
 そんな、いつもとは違う山小屋前で、黄色の法被を着て、頭に花飾りを付けたみんなが、歌ったり、楽器を奏でたり、踊ったり、演じたりしていました。
 たくさんのなのはなが、春風のなかでお祭りをやっているようで、まぶしくて素敵な光景でした。
 風は、コンサートに最高の演出を加えてくれました。
 小バンドの「宙船」を歌うお母さんや、演奏するみんなを見て、わたしは、向かい風のなかで船の甲板に立っているみたいだなと思いました。
 あんな心地好い日に、みんなとひとつのコンサートを作り上げられたことが、とても嬉しいです。